DBD(誘電体バリア放電)プラズマ発生装置を作成してみました

プラズマには様々な発生法がありますが、最も簡単な発生方法の一つにDBD(Dielectric Barrier Discharge)、日本語で誘電体バリア放電があります。今回はこの誘電体バリア放電を用いたプラズマ発生器を作ってみました。予算的には大体2万円位でできてしまいます。動画も作ってみましたので、こちらもご覧ください!

DBDプラズマ発生装置

プラズマはイオン化したガスのことです。イオンにはプラスイオンとマイナスイオンとがありますが、プラズマはプラスイオンと電子からできています。つまり、原子から電子が飛び出すことで原子はプラスイオンとなりますが、マイナスの電荷をもった電子もプラスイオンと共に存在しているためプラズマ全体としては中性に近くなります。

プラズマの特徴として、電場に影響を受けることが挙げられます。つまり、直流や交流電流を印加すると、プラズマは反応し、電場の変化に従って動き主に電子が電場から運動エネルギーを得ます。さらにマイクロ波などの電磁波でも同様にプラズマ粒子を動かし、エネルギーを与えることができますので、マイクロ波やラジオ波などを使ってプラズマを発生させることができます。

基本的にプラズマは不安定なため、周辺に粒子が多いと粒子同士が衝突しやすく、プラズマが発生しても粒子同士の衝突によりすぐに失活してしまい、定常的に放電を続けさせるのは困難です。そこで、ポンプで圧力を下げて粒子同士の密度を下げることで衝突しにくくすることで定常的で安定したプラズマ発生が可能となります。

プラズマは条件さえ合えば比較的簡単に作り出すことができます。放電のしやすさ、しにくさを表した法則にパッシェンの法則なるものがあります。このパッシェンの法則をグラフにしたものはパッシェンカーブと呼ばれていますが、これによると放電は電極間の電圧と電極間距離、さらには圧力により決まる、というものです。放電が起こると周囲の分子や原子を電離してプラズマが発生します。

では無電極でプラズマが発生する場合はパッシェンの法則はどうなるの?っと素朴な疑問が浮かび上がりますが、そもそも電極がない状態でプラズマは発生するのでしょうか?実際のところは圧力が適切で粒子の速度が衝突により電離するのに十分でしたらプラズマは発生しますので、無電極でも適切な圧力の元、適切な周波数を照射すればプラズマは発生するのです。よく使用されるのが無電極のマイクロ波プラズマです。

マイクロ波プラズマ発生装置も有り合わせの材料で作れますが、こちらは消費電力が高すぎるので総務省への届け出が必要になります。因みに50Wを超えると届け出が必要です。

圧力が高すぎるとプラズマが失活しやすく、アーク放電を起こしやすいので大気圧でプラズマを作ることは難しいのですが、電極間に誘電体を置けばアーク放電は起こらず、誘電体を介して放電は電極面全体で起こり、プラズマとなります。誘電体は一方の電極でも両方の電極に設置しても構いません。どちらでもプラズマは発生します。

誘電体バリア放電の電極の一般的な構造は、二つの電極となる金属の板を平行に置き、一つの金属板に誘電体を密着させます。そして、交流電圧を印加させることで誘電体ともう一つの金属板との間で放電が行われます。放電が全面に渡り安定していたら電極間ではプラズマが発生しています。

誘電体バリア放電で難しいことは高電圧を発生させなければならないことです。空気中の絶縁耐力は30kV/cmと言われており、1mmの距離で放電させる場合でも3kVもの電圧が必要となりますので、現実的にはトランスを使って昇圧し、1kV以上の電圧を発生させなければなりません。

誘電体バリア放電は一方で電流は少なくても済むので電源的にはそれほど大きな出力は必要ではありません。これより、誘電体バリア放電はプラズマの中では熱が発生しにくいという利点があります。

誘電体バリア放電によるプラズマの使い道ですが、オゾン発生器や表面処理、化学物質の分解などに使用できます。特にオゾンは大量に発生します。

必要な材料

誘電体バリア放電器を製作する際に必要な材料は以下の通りです。

  • ACアダプタ×2(適切な出力のもの)
  • トランス(自分で巻きます)
  • コンデンサ(インピーダンス整合用)
  • インダクタ(インピーダンス整合用)
  • ファンクションジェネレーター(1MHz程度まで)
  • アンプ(スピーカー用で十分です)
  • 銅線、エナメル線(適量)
  • 銅板2枚(5cm×5cm×0.5cm程度)
  • ガラス(5cm×5cm×0.1cm程度)

これらの材料を組み合わせて作るわけですが、機能によって4つのパートに分かれています。1つ目は交流を発生させる部分、2つ目は交流を増幅させる部分、3つ目は昇圧部分、4つ目は放電部分です。以下にそれぞれのパートについて説明します。

各パートの説明

1.交流発生部

1番目の交流発生部分ですが、一言で交流と言っても周波数がありますのでどの周波数がいいのかわかりません。プラズマを発生させる際には回路のインピーダンスが低くなければなりませんし、インピーダンスは周波数に依存します。この問題を解決する最も簡単な方法は回路のインピーダンスに合わせて交流の周波数を変えることができればいいわけです。そこで使用するのがファンクションジェネレーターです。

ファンクションジェネレーターはモノによりますが1Hzから1MHz程度まで幅広い周波数を出力でき、正弦波のみではなくノコギリや矩形波なども出力できるものもあります。2000円も出せばアマゾンで購入できます。

2. 交流増幅部

交流増幅は、ファンクションジェネレーターにより作り出された交流の電力を増幅する部分です。ファンクションジェネレーターで作り出された交流の電力は低く、電圧的には1V程度しかありません。これを昇圧したところでプラズマを得るのは困難です。そこで、交流の周波数そのままに電力を増やしてあげるシステムが必要になります。

誘電体バリア放電は大体kHzのオーダーで行うことが多いと思います。このkHzとは身近なところでは音波の周波数に相当します。つまり、30Wくらいの数千円の安物のオーディオのアンプでも十分に機能しますので、スピーカー用のアンプを買えば大丈夫です。ステレオだとスピーカーも二つですので、二つの端子がありますが片一方だけ使用すればOKです。ただし、MHz以上となると専用のアンプが必要となり、お値段も跳ね上がります。

ファンクションジェネレーターで作られた小さな交流を、モノにもよりますが安物のアンプに入れることで100W程度まで電力を増大させることができます。この時、直流電源を使用して電圧や電流を調整しますが、ACアダプタで十分ですが、適切な出力を持ったものを選ぶ必要があります。

この交流の工程は、小さな音をスピーカーで大きな音にする工程と一緒です。

3. 昇圧部

アンプを出た交流は、20V程度しかありません。これでは放電に必要な3kV/mmを得るためにギャップを無茶苦茶小さくしなければなりません。現実的ではないので、アンプで増幅された電圧を昇圧して1kVを超える電圧を作り出します。この際にはトランスを使用しますが、そのようなトランスは探した限り売っていませんので、磁心がフェライトのコアを購入して自分でエナメル線を巻きます。巻き数は覚えてというか数えていませんが、内側10回に外側はパンパンになるまで巻いています。これだけで3日くらいかかり腕が痛くなります。ちなみに昇圧の割合は巻き数に比例しますので、電圧を2倍に昇圧するには、内側の巻き数の2倍、外側を巻けばいいです。

4. 放電部

放電部分は二枚の銅板にネジ穴をそれぞれ開け、ネジを締め付けて端子を作ります。そして、一枚の銅板の上にビスやナットなどをスペーサーとして置き、その上にガラス、銅板の順で置きます。両方の銅板のネジ部に銅線を繋ぎ、トランスと繋ぎますが、ここでインピーダンスの問題が出てきます。銅板を二枚平行にしておくと、コンデンサになってしまいますので、この容量成分のインピーダンスを上手く打ち消してあげる必要が出てきます。

インピーダンスは実測値及び電気回路ソフトのLTスパイスで計算して出しています。このインピーダンスを整合させ、交流を通しやすくするためにコンデンサとインダクタをつなぎます。インピーダンスが整合した場合、送電できる電力が最大になりますので、放電部分で消費できる電力も最大になります。

このコンデンサとインダクタはそれほど正確ではなくてもいいです。なぜならば、細かい部分は周波数を変えてあげればいいからです。インピーダンスがしっかりと整合しないと電気が上手く流れずにプラズマは発生しません。音波レベルの周波数を使用していた場合はインピーダンスが整合しているかどうかは音の変化でわかります。つまり、コンデンサとインダクタで大雑把にインピーダンスを整合させ、最終調整として周波数を変化させると言う訳です。

回路設計

下の図がLTスパイスで作ったDBD回路です。LTスパイスにはトランスが無いのですが、下のようにL1とL2の2つのコイルをくっつければトランスとして機能します。V1は電源で4Vで20.5kHzの正弦波を出します。C1が銅板を平行に置き、間にガラスを入れた放電部になります。銅板を平行に置いてますのでコンデンサとなっており、キャパシタンスを持っています。C1の40pという値は40pFで実測値になります。この放電部分にかかる電圧が最大となるようにインピーダンスを調整すればいいと言う訳です。このために、C2とL3の値を決めていきますが、これらの値は計算でわかります。C2を0.07mF、L3を0.072mHとしています。

LTスパイスを走らせてみると、以下のように最大値4Vの電圧が放電部であるC1で350Vととなっており、100倍近く電圧が上がっていました。一方で直列で接続されているC2やL3を調べてみてもほとんど電圧はかかっていませんでした。つまり、C1に電圧が集中しており、電力消費が非常に高くなっています。平行平板のコンデンサの電力消費が高いということは、つまり高電圧で高電流が流れているということですので、この電気エネルギーが平行平板内に存在している電子の運動エネルギーに変換されることでプラズマが発生するという訳です。

実際のところ、市販のコンデンサの容量は決まっていますのでこのようなインピーダンスに合わせた回路設計は難しいです。従って、実際に回路を作るときはインピーダンスをざっくり合わせておき、最終的には周波数を変化させて整合させます。

DBDプラズマシステムセットアップ

回路設計ができてまあ大体大丈夫でしょう、となれば実際に放電システムを作ってみます。高電圧になりますが実験なので簡易的に作っています。下がその写真です。

C1の放電部分の隙間は以下の写真の通りです。ガラスの上にビスを四つ置き、その上に銅の板を載せています。

放電及びプラズマの効果の検証

ここでスイッチを入れて放電させてみます。

電力や周波数を調整するとキーンという音が聞こえてきて、周波数の変化に伴い音が変わります。そして、音が大きくなり、シャーという音に変わると放電されています。DBDはオゾンをよく発生させるため、長く放電させるとオゾン臭が漂うので、数秒で終了させます。実際に使用するときには下の写真のように3Dプリンターでケースを作って流したいガスを流しながら放電させます。

ケースの中はこんな感じです。

ケース手前の側壁にガラスをはめ込んで窓にしていますので、放電部を目視できます。

実際のプラズマの効果ですが、簡単な実験としてガラスの表面の影響を見てみます。ガラスは洗剤で洗い、アルコールで拭いただけですが、ここに水滴を落としてみます。すると表面が若干疎水性のため、表面張力で少し盛り上がりました。

そして、プラズマを当てた後のガラス表面に水滴を落としてみると、先ほどとは違い広がっていっています。つまり、ガラス表面が親水性になっていることが分かります。これはガラス表面の油分などの汚れが除去されるとともにプラズマにより大気中の水蒸気が分解され、ガラス表面にOHがくっついたためであると思われます。

せっかくですから、もっと他の素材でも試してみました。100均で売っているファイルです。

素材はポリプロピレンとのことです。実際にポリプロピレンかどうかFT-IRで測定してみました。

すると、以下の波形が得られました。

まあ、普通のありふれたポリプロピレン(C3H6)nです。スペクトル中にはCH2やCH3からの吸収ピークが見られます。因みに緑や赤などファイルの色で波形が異なるかどうか見てみましたが大きな違いは見られませんでした。

これにプラズマを5秒くらいあててみると、以下の波形になりました。1700cm-1辺りが若干こんもりと盛り上がってきました。

さらに5秒ほど追加で照射してみると、以下の緑ようになりました。1700cm-1辺りがさらに盛り上がってきました。

わかりやすく、大気圧補正とスムージングとベースライン補正と規格化をしてみると、以下のようになります。1700cm-1辺りと3500cm-1辺りも若干盛り上がっているように見えます。1700cm-1辺りの吸収はC=Oだと思われます。3500cm-1辺りはOHの可能性があります。つまり、ポリプロピレンがプラズマ、おそらくはオゾンにより酸化されたことにより波形に変化が出たと思われます。

と、こんな感じでDBDプラズマ発生装置を作り、プラズマの効果を試してみました。まあ、プラズマの効果があるかどうか確認する、もしくは簡易的なオゾン発生器として使うだけでよければ機能すると思います。

因みにFT-IR測定ですが、格安で承っております。データ処理や解析も行います。FT-IRは島津さんのIRXrossで、Ge結晶が付いています。ATRのみではなく透過も可能です。液体は腐食性でなければATRでGe結晶に直接ドロップして測定できます。液体の透過及びガスの測定は専用のパーツ買えば可能です。

サンプルのプラズマ処理や電気炉等でのアニール処理、薬品処理(硫酸や水酸化ナトリウムなど危険すぎないものに限ります。)も承っておりますので、処理前後のサンプルのIRスペクトル比較も可能です。一応、炉は1400℃くらいまで昇温できますので、SiO2の粉からガラスも作れます。これまでLiSiO、NaSiO、KSiO、RbSiO、CsSiOなどマニアックなガラスを作った実績があります。ガラスの原料にもよりますが、料金は大体3万円~です。ガラスに限らず合金なども作れるものはあの手この手で作っちゃいます。

他にも簡単な金属加工や3DCADによる設計、3Dプリンタでの出力などもできます。因みにガスはメタンとHe、水素ガスがあります。

ラボは広いのでそこそこの規模のシステムを組むことができますし、3相も使えます。ここに様々な機器を設置してシステムを組み上げ、実験、評価、解析をいたします。

私一人でやっていますので、非常に柔軟にご対応いたしますし、料金も安い自信もあります。外部に自社の研究開発課を持つというイメージです。全力でサポートいたしますので、ご興味のある会社様は連絡フォームからお気軽に連絡してください!

投稿者について

代表

マッケンジー研究所代表です