大学で研究をしていたころ、ガラスについて研究をしていました。その時、すごく悔しかったことは自分でガラスを作れなかったことです。たかがガラス、エジプトだかメソポタミアの古代より使われてきた素材です。西暦2000年を越えた今、自作できない訳はない、ということで自作してみました。
まずはSiO2とNa2CO3の粉を混ぜて、その時使っていた電気炉の最高温度であった1350℃まで加熱してみましたが、出来ません。それじゃあ、ということで市販されている中で最も火炎の温度が高いガスバーナーを買ってきて加熱してました。しかし熔けないんですよね。
原理的には融点の低いNa2CO3が熔けて、そのアルカリ液でSiO2のシロキサン結合が切れて未結合の酸素が現れ、ナトリウムとイオン結合しながらSiO2が徐々に熔けていく、ということです。SiO2の融点は1700℃位なので、1300℃位あれば熔けそうな感じですが、1350℃で一晩加熱してもダメでした。
ああ、もうだめか、とあきらめていました。そんな中でふとアマゾンを見ている時に見つけたのがこれです。

これは電子レンジ内で使用できる炉です。真ん中のくぼみの内側にマイクロ波を吸収する素材が塗布されており、電子レンジでチンすると内部が過熱されて炉になる、という寸法です。
試しに購入してみて電子レンジに入れてみると、内部が赤熱しているではないですか。熱電対を入れてみると燃え出して温度測定不能だったので、放射温度計で測ってみると軽く1200℃を越えていました。こ、これは、いけるかも、ということでSiO2とNa2CO3を購入し、混ぜ混ぜして入れてみました。
するとしっかりと熔けて液体になっているではありませんか。ああ、やっと自分にもガラスが作れた、ということで感無量になり燃え尽きてしまいました。この後、シリコンを加熱してみましたが僅かに熔けた感じになったので、到達温度はシリコンの融点に近い1400℃ちょっとだと思います。
そんな中、最近動画制作のお手伝いをしている、東大生Youtuberのさるふぁさんに、じゃあこれで動画撮ったら、ということで実際にガラスを作る動画を撮ってもらいました。プラズマが作れるわ、ガラスが作れるわで電子レンジって凄いですね。
折角なので動画内ではナトリウムだけではなくリチウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのガラスも作ってもらっています。しかも、ちゃんと炎色反応も見た上で、動画には載せていませんが、実はそれぞれのガラスのFT-IR測定もしています。折角なのでFT-IRの結果を載せてみます。

FT-IR測定の結果は全く謎ですね。以下のバネの式の通り、アルカリイオンにより重さが変わるため、ピーク位置も変わるのだろう、と思っていましたがほぼ同じ位置に出ています。
ν=1/2π √(k/μ) v:振動、k:バネ定数、μ:質量
イオン交換による化学強化(リチウムは脆化)により、ソーダライムガラス内のナトリウムイオンをリチウムもしくはカリウムイオンに置き換えた結果、FT-IRのピークは上の計算式で予想される位置に出てきました。やっぱりこうなりますよね、という結果です。

なぜこうなるのか謎だったのですが、オーストラリアの大学の学生に話してみるとそれはこうだ、と見事に説明してくれました。詳細は非常に長くなるので割愛させて頂きますが、それで論文まで書いてしまったので彼の将来が楽しみですね。
まあ、そんなこんなでガラスサンプルが欲しい方や非常に高温が必要な事業者様がいらっしゃいましたら、マッケンジー研究所までご連絡頂けますと対応させて頂きます。ガラスはソーダライムやパイレックス、アルミノシリケートを始めとしてアルカリイオン種や組成を変えたもの、金属を入れてステンドグラスも作れると思いますので、お気軽にご連絡ください。材料を御支給いただけるのであれば、一回試すだけならな、なんと3万円で対応いたします!